眠り姫或は

昨日、はてなハイクで知り合った方々にお会いした。 ダイアリーでの告知を受けて、いつものごとく軽い酸欠状態で参加させていただいた。 いい加減に慣れればいいのに、この心臓め。 予報通りの晴天で、汗ばみながらも爽やかな陽気だった。 初夏の気配に、迫…

モノトーン

窓を開けて降る雨の音を聴く。 外は明度が低く、部屋の灯りがやけにこうこうとして見える。 くすんだ色合いの空を眺めていると心が落ち着く。 私の本来の気質や性分に、雨や雲の佇まいがしっくりと馴染むのだ。 このじめじめとした、うっとうしいもの! 雨音…

宇宙の中心

ほの暗い地下に宇宙が出現した。 三種の楽器と声と無数の機械が、渾然一体となって空気を歪める。 芯から操られた人々の体が、熱に浮かされたように揺れていた。 まばゆい光が空気を貫く。 常ならば目を閉じて音に浸るところを、踊る光があまりにも美しくて…

夜を往く燈

God Rest Ye Merry Gentlemen を聴くと、藍色の夜が広がる。 家の中はオーナメントで飾られている。 ツリーの下にはプレゼントが積まれ、 部屋の壁から壁へ渡した紐に、贈られたカードがかけられている。 ピアノの上のアドベントカレンダーは開ききって、 家…

そこに君が

銀幕の中に、昔好きだった人が現れる。 ほんの二、三分の、一方的な再会だ。 顔は毎年変わっていくように見えるけれど、 声はあまり変わらない。 自然なのか不自然なのかわからないしゃべり方も。 その姿を食い入るように見つめてから、 ようやく物語に集中…

震える粒子

光の中で声をあげる人を見ていた。 音が粒になって、体の表面を打つ。粒になって、体の中をかけめぐる。 酸を浴びているような、血がビールになったような、強い刺激で全身が痺れた。 その圧倒的な幸福感を他に知らない。 空など見えない閉塞された空間で、…

刻みこむ死

猫が死んだ。 もうだめかもしれないから帰ってきて、という姉の声を受話器越しに聞いた。 どうしてもどうしても帰りたくない理由があったのだけれど、 秤にかけた時、共に過ごした14年間を捨てることはできなかった。 帰らなかった時の後悔も、笑えるくら…

過去と言語

久しぶりに聴いた音は、表皮からぐんぐん吸い込まれていくようだった。 演奏する彼らの姿を目で追いたい気持ちよりも、音に浸りたい気持ちの方が大きくて、 何度かゆれながら、目を閉じた。 細胞が打ち震えた。 一番好きな曲は、本番では聴くことができなか…