2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

夜を往く燈

God Rest Ye Merry Gentlemen を聴くと、藍色の夜が広がる。 家の中はオーナメントで飾られている。 ツリーの下にはプレゼントが積まれ、 部屋の壁から壁へ渡した紐に、贈られたカードがかけられている。 ピアノの上のアドベントカレンダーは開ききって、 家…

そこに君が

銀幕の中に、昔好きだった人が現れる。 ほんの二、三分の、一方的な再会だ。 顔は毎年変わっていくように見えるけれど、 声はあまり変わらない。 自然なのか不自然なのかわからないしゃべり方も。 その姿を食い入るように見つめてから、 ようやく物語に集中…

舌に幸福を

おいしいものを食べられることじゃなくて、 おいしいと思って食べられることが嬉しい。 めんたい高菜をじゃくじゃく食べる。 納豆、わさび漬け、脂がのって皮がぱりっと焼けたしゃけ。 白いご飯をもしゃもしゃ食べる。 お出汁がじっくり染みこんだ大根といか…

絹糸の揺籃

秋の夜を吹きぬける風はその冷たさとは裏腹に落ち葉のあたたかなにおいがする。 襟元をかきあわせ、心持ち早足で、それでも呼吸を楽しみながら、団地の隙間を歩く。 もう我が家が見える、というところへ来て、眼の前に何やら物体が浮かんでいるのに気付いた…