そこに君が

銀幕の中に、昔好きだった人が現れる。
ほんの二、三分の、一方的な再会だ。
顔は毎年変わっていくように見えるけれど、
声はあまり変わらない。
自然なのか不自然なのかわからないしゃべり方も。
その姿を食い入るように見つめてから、
ようやく物語に集中できる、と、ほっとため息をついた。
感動も興奮もあまりなく、それはとてもシンプルで、
ただ懐かしいだけの小さな再会の場だった。
終わって、流れてゆくクレジットでニセモノの名前をみつけ、
なぜか少し、頬が緩んだ。
君に呼ばれる時、私は自分の名前が好きだった。