過去と言語

久しぶりに聴いた音は、表皮からぐんぐん吸い込まれていくようだった。
演奏する彼らの姿を目で追いたい気持ちよりも、音に浸りたい気持ちの方が大きくて、
何度かゆれながら、目を閉じた。
細胞が打ち震えた。
一番好きな曲は、本番では聴くことができなかったけれど、
リハ中にこっそりつまみ食いする機会に恵まれた。
(自ら強引にもぎ取ったとも言えるけれど)
エレベーターの中、金縛りにあったように体が硬直して、耳だけが貪欲に音を拾っていた。
代官山UNITで初めて生の音に触れ、
「今死にたい」と思った無上の幸福感を、まざまざと思い出した。
私は、完全にあの音に負けている。

降伏する幸福。