舌に幸福を

おいしいものを食べられることじゃなくて、
おいしいと思って食べられることが嬉しい。
めんたい高菜をじゃくじゃく食べる。
納豆、わさび漬け、脂がのって皮がぱりっと焼けたしゃけ。
白いご飯をもしゃもしゃ食べる。
お出汁がじっくり染みこんだ大根といかの煮物、ほうれん草のとろろ和え。
柔かく煮込まれた野菜がごろごろ転がる豚汁。
熱く濃い煎茶を啜るころには、
体は湯気でもたちのぼりそうなくらい温まっている。
おいしいと思って食べられるということは、
つまりおいしいものを食べているということか。
やがてホットカーペットのぬくもりに誘われ、
すっかり満たされた体のすみずみが、とろけるような眠気に冒されてゆく。
甘い誘惑に勝てず身を横たえると、いよいよ眉間がぼんやりしてくる。、
今寝たらとても幸せな牛になるな、と思いながら、とっぷりと目を閉じる。
ごちそうさまでした。