つづる徒然

私が小さい頃に文字を選んだのは、他に手段がなかったからだ。
ずいぶん早い段階で、私は他の手立てを切り捨てた。
周りに絵が上手な子なんて、五万といた。
私の容姿はテレビに出られるようなものではとてもなく、
歌うことをあきらめた。
文字だけが残った。
表現できれば、たぶん何でもよかったのだ。
そして他の何もできなかった私に、文字だけが残ってくれた。
 
今はあの頃と違って、文章を書く人が増えている。
それこそ文章の上手い人なんて、十万と、百万といる。
けれど私はもうずっと、文字というものとなじんでしまっている。
今更他の手段で戦おうなんて思えない。
書いても書いてもぎこちないばかりの文章に、
焦燥感や自己嫌悪で真っ黒になりそうになりながらも、
一年に一回くらい、自分で納得のいく一文が紡ぎ出せることがあって、
それだけで私は、あの時文字の道を選んでよかったと、心から笑うことができる。