春深き午後

少し香ばしいような、日向のにおいがする春の日は、小学校を思い出す。
風邪を引いて、家で寝ながら小学校のチャイムを遠くに聞いて、
教室の喧騒を思い浮かべるのに似ている。
すすけたグラウンド、濁った青の空、桜の花びらが散る道、上着のなくなったからだ、
ゆるい空気を泳ぐように、ランドセルを背中で鳴らして歩く。
遊んでいた子供達は午後の予鈴を合図に教室に入り、
騒がしかった空間に少しずつ静寂が広がってゆく。
体育のない校庭はひっそりとしていて、やがて教室の中では授業が始める。
ほこりの舞う静けさは、とても有機的だ。
その空気を、春はいだいている。
日向で、誰にも見られず、桜がそよ風に散ってゆく。
木も、植えられた花も、雑草も、ぐんぐん育つ。
子供達は衝動を押さえ込みながらじっと先生の声に耳をこらし、
私はそれらの風景をまぶたの裏に思い浮かべながら、枕に顔をうずめている。