風邪を引く

夜明け頃、蒸し暑さに目を覚ますと、喉の奥が焼けるように痛い。
外側からは確認しようのない気管支の形を、思わず脳裏に浮かべるほどに、
あかあかと腫れあがっているのが感じられる。
冷房の空気が部屋にいきわたり、眠るのに最適な温度になったところで、
今度は痛みに眠りを妨げられる。
小さい頃は、風邪というとまず、喉、鼻からだった。
ここ数年は、熱が出てから頭痛、というパターンに変わり、
体質は年々変わってゆくものだと実感していた。
久しぶりにやってきた呼吸するのが辛いほどの痛みは、
どこか過去への甘苦い郷愁を伴っていて、
ほんの少し、不快さが取り除かれた。
眠りに落ちることは諦めて、布団を出て、洗面所へ行く。
朝の水は詰まった鼻にも臭いが強く、うがいをしながら
いかほどの効果があるものか、とぼんやり思った。


夜になり、不安感に包まれる。体から、病気の臭いがする。
これもまた風邪の症状のひとつ。
眠れなくなる前に、はやばやと床に着くことにする。