命あるもの

ドウダンツツジが新芽の先から蕾をのぞかせていた。
「新芽」と言うのすらためらわれるほど淡く柔らかいさみどりに、おそるおそる触れてみた。
小指の先ほどの蕾は、それでもはっきりとわかるほど肌理細かく、その身の内にひたひたと水分を蓄えていた。
私のカサカサの固い指にも伝わるその瑞々しさと薄く柔らかい肌触りは、
生まれたての赤ん坊の手のひらを思い起こさせた。
曇りのない、真新しい細胞に触れる時、私は何度でもこの蕾のことを思い出すのだろう。
ゆるんだ陽射しを浴びながら、暫しそのさみどりを撫で続けた。