共有しない

きっと写真に残せば、一緒の思い出に変わる。
共に懐かしさに目を細めることができる。
でもその思い出は、共通しているようでしていない。
私の目線の思い出と、あなたの目線の思い出は、きっと部分的にしか重ならない。
 
五感にしみこますのは、一人の思い出で。
血となり肉となり、髪の、爪の先までゆきわたる。
ある冬の午後の風は、その香りと冷たさで、私の記憶を呼び覚ますだろう。
流れていた音楽はいつか、私がその時景色をどんな思いで眺めていたかを、思い出させるだろう。
写真には映らない私の意識を、全部五感に閉じ込める。
 
何一つ重要じゃない。
何一つ共有しない。
あなたはあなたのものを持って行け。
私は私のものを持って居る。